朝の散歩道

 

 

いつもの散歩道

 

僕の住んでいる宮若市は山に囲まれている盆地

 

だからこの季節は毎朝霧が深く幻想的な雰囲気すらある

 

何気なく歩いてるいつもの道

 

だいたい25分くらいかけてゆっくり歩く

 

雨の日と出張でいない日を除けばほぼ毎日

 

散歩の相棒愛犬のうめはもともと野良犬だったこともあり

 

こちらのペースをお構いなくグイグイ進んでいく

 

途中すれ違う近所のおじいさんおばあさんと挨拶

 

いつも聞こえてるのか聞こえてないのか無視されることも多い

 

少し歩けば周りは田んぼやブドウ園

 

朝露と霧と植物や蜘蛛の巣

 

この時間ならではの特権だ

 

意識しないと流れ行く景色

 

その瞬間瞬間目に映りこんでくる儚さを逃したくない

 

うつろいゆく

 

諸行無常

 

この世で不変なことは変わり続けているということ

 

変わらない方が世の中の摂理としておかしいのだ

 

今しかないこの瞬間を切り取る

 

このいつもの道も日々変わっている

 

何に照準を合わせるか

 

美の探求は永遠に終わらない

 

美を愛する

 

美を身につける

 

美と接吻し続ける覚悟がなければ

 

表現者としての生命は短い

 

と昨日読んだ北大路魯山人の本に書いてあった

 

まさにそうだな

 

意識すると際立つ

 

つい一週間ほど前のこと

 

散歩道の途中で

 

二匹のイノシシの子どもがフェンスに吊らされて死んでいる

 

多分近所の農家さんが悪さをするからと罠を仕掛けて殺したんだろう

 

最初遠くから見ているとなんだろうと

 

徐々に近づくにつれてその正体が明るみになってくる

 

最初見たときは何かわからずギョッとするくらい

 

まだ少し前まで生きていたのかという感じがした

 

命ってなんなのだろう

 

普段意識せずにお肉を食べている自分は

 

この死をかわいそうだけで終わらせることができない

 

スーパーに行けば部位毎に分かれてパックされて売っている

 

その死んで加工されていく様というのを

 

目の当たりにしていないだけだ

 

じゃあお前に生じるその気持ちは偽善じゃねーかと

 

毎日そのイノシシの腐敗臭が横を通る度にツーンと鼻を通じて訴えかけてくる

 

お肉をやめるということ以外ぼくには何も言えない

 

だからこそ感謝しなければ

 

目の前にある全てが生かされているということを知らなければ

 

その連鎖の中に自分はいる

 

家族がいて

 

その両親がいて

 

脈々と連なる先祖がいて

 

それぞれに歴史があって

 

自分はその一部なのだ

 

全ては繋がっている

 

心のどこかではわかっている

 

いや当たり前なんかないってことを本当にわかってるのか

 

何があるかなんか誰にもわからない

 

あのイノシシだってそうなのだ

 

誰の目線に立って物事を考えるかで話は変わってくる

 

愛犬うめはそろそろ散歩の時間だと今か今かと吠えている

 

二匹の猫たちもご飯をくれーと鳴いている

 

今日も今日という日常が始まる

 

子どもたちを起こして

 

ご飯食べさせて

 

いってらっしゃいと送り出す

 

それが世界中の中で

 

それぞれの暮らしがあるのだ

 

本当の意味でのLIFE STORY

 

それぞれの今日を生きよう

 

 

 

 

またいつかこれを見返したときの自分メモ

 

限界はいつも超えられたがっている

 

それを忘れないように

 

 

 

yasuhide ono | 小野 泰秀

五児の父 世界放浪の際にアクセサリー制作の活動を開始 2013年福岡県宮若市に移住 2015年9月新月より福岡県宮若市にて「うつしき」というギャラリーを始動 日本の美意識、東洋的価値観、装身具の持つ”心を装う”という機能を追求する

うつしき

暮らしと道具のあいだ

©yasuhide ono